修理は、原則として「貸主」が行います

民法では、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定められています(民法606条1項)。お部屋に備え付けの給湯器・エアコン・トイレ・換気扇などが、古くなったり自然に壊れたりして使えなくなった場合、修理をするのは、原則として貸主(大家さん)側です。

ただし、借主の責任で壊れた場合は別です。同じ条文のただし書きで、「賃借人の責めに帰すべき事由」によって修繕が必要になったときは、貸主の修繕義務の対象外とされています。国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」では、修繕はすべて貸主が行い、借主の責任で必要になった修繕は、その費用を借主が負担する形が示されています(第9条1項)。物を落として壊した場合などに備える保険については、「火災保険・地震保険の選び方 賃貸と持ち家で変わるポイント」もご参照ください。

壊れたら、まず管理会社・貸主へ連絡を

借主には、お部屋に修繕が必要な箇所があるときは、遅滞なく貸主に知らせる義務があります(民法615条)。お湯が出ない、エアコンが動かない、水漏れがあるといったときは、まず契約書に書かれている管理会社や貸主の連絡先へ伝えましょう。

  • いつから・どんな症状か:エラー表示の番号や、異音・水漏れの様子を写真や動画で残しておくと、業者の手配がスムーズです。
  • 連絡の記録を残す:標準契約書の解説では、修繕が必要である旨の通知は、書面や電子メールなどで行うことが望ましいとされています。電話で伝えた場合も、日時と相手の名前を控えておくと安心です。
  • 自分で業者を呼ぶ前に相談を:先に連絡をせずに修理を頼むと、費用の負担をめぐって話がこじれることがあります。

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貸主が直してくれないときは?借主が修繕できる場合

2020年4月1日に施行された改正民法で、借主が自ら修繕できる場合が条文に定められました(民法607条の2)。

  1. 通知したのに直してもらえないとき:借主が修繕の必要を貸主に伝えた(または貸主が知った)のに、相当の期間内に修繕されないとき。
  2. 急迫の事情があるとき:水漏れが続いて階下に被害が広がりそうな場合など、待っていられない事情があるとき。

貸主が負担すべき修繕の費用(必要費)を借主が立て替えた場合は、貸主に「直ちに」その償還を求めることができるとされています(民法608条1項)。ただし、「相当の期間」がどのくらいか、どこまでの修理が必要だったかは、状況によって判断が分かれることがあります。まずは連絡と記録を残し、話し合いで進めることが、トラブルを防ぐ近道です。

電球やパッキンなど「小さな修繕」は、契約書を確認

国土交通省の標準契約書では、次のような費用が軽微な修繕は、借主が自分の負担で行うことができる、としています(第9条5項・別表第4)。この場合でも、貸主に修繕を求めることもできる、と解説されています。

  • ヒューズの取替え
  • 蛇口のパッキン、コマの取替え
  • 風呂場等のゴム栓、鎖の取替え
  • 電球、蛍光灯の取替え
  • その他費用が軽微な修繕

標準契約書はあくまで「ひな形」で、実際の契約書の内容は物件ごとに異なります。小修繕の範囲が特約で決められていることもあります。また、入居時から付いているエアコンなどが、契約上は貸主の「設備」ではなく、前の入居者が残していった物(いわゆる残置物)として扱われていることもあり、その場合は修理の扱いが変わることがあります。契約書や重要事項説明書の「設備」の欄と特約を、一度見直しておくと安心です。

使えない間の家賃はどうなる?「減額」の考え方

民法611条1項では、お部屋の一部が使えなくなり、それが借主の責任によるものでないときは、使えなくなった部分の割合に応じて「賃料は…減額される」と定められています。改正前は「減額を請求することができる」という書き方でしたが、2020年4月の改正で、当然に減額されるという形に変わりました。

とはいえ、どのくらい減額されるかの明確な基準はありません。国土交通省の事業として作成された「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集」では、次のような考え方が示されています。

  • 減額の対象となるのは、使えない程度が社会通念上の受忍限度を超え、通常の居住ができなくなった場合と考えられる
  • 減額の程度・期間・方法は、貸主と借主が協議して決めることが望ましい(標準契約書 第12条1項も、協議することとしている)
  • 実務では、減額に代えて、代わりの設備や品物の提供などで対応することも多い
  • 過去の裁判例では、雨漏りや漏水、排水管の詰まりなどで減額が認められた例がある一方、エアコンの不具合や照明器具・換気扇の故障などでは、軽微であることなどを理由に減額が否定された例もある

「使えないのだから」と自己判断で家賃の支払いを止めてしまうと、別のトラブルにつながるおそれがあります。気になるときは、まず管理会社・貸主に相談しましょう。結露によるカビなど、原因によって負担が変わる例は「冬になる前に知っておきたい、お部屋の結露とカビ対策の基礎知識」で、退去時の費用負担については「糟屋郡の賃貸契約|更新料・敷金精算でよくあるトラブルと注意点」で解説しています。

貸主(オーナー様)側で備えておきたいこと

設備の故障は、冬の給湯器や夏のエアコンのように、使う季節に集中しがちです。入居者からの連絡を受ける窓口をはっきりさせておくこと、設備の一覧と設置時期を把握しておくこと、すぐに頼める業者を決めておくことが、対応の早さにつながります。管理を任せる場合の考え方は、「賃貸管理を任せるという選択肢」もご参照ください。

まとめ

賃貸のお部屋の設備が壊れたときは、①原則は貸主が修理、②借主の責任で壊れた場合は借主の負担、③まずは管理会社・貸主へ連絡し記録を残す、④小さな修繕や設備の範囲は契約書で確認、⑤使えない間の家賃は話し合いで、というのが基本の流れです。

当社では、糟屋郡エリアのお部屋探しや、オーナー様向けの賃貸管理のご相談を承っております。お気軽にoota不動産までお問い合わせください。なお、現在お住まいのお部屋の修理については、まずはご契約先の管理会社・貸主へご連絡ください。

※本文は、民法(第606条・第607条の2・第608条・第611条・第615条)、国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)」とその解説、「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集~賃借物の一部使用不能による賃料の減額等について~」(2018年3月)に基づく一般的な内容です。実際の修繕の範囲や費用負担、賃料の扱いは、契約書の内容や個別の事情によって異なります。具体的なトラブルについては、管理会社・貸主のほか、消費生活センターや弁護士などの専門家にご相談ください。

この記事の監修
太田 秀一郎
株式会社oota不動産 代表取締役/宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

糟屋郡を中心に、不動産の売買・賃貸・管理・相続のご相談をお受けしています(宅地建物取引業 福岡県知事免許(1)第20299号)。詳しくは代表の思い・会社概要をご覧ください。